川尻善昭公式サイト

トーク

CLAMP CROSS TALK R1 川尻善昭×CLAMP 大川七瀬

※1996年に月刊ニュータイプ誌上で行われた対談を関係者のみなさまのご厚意により転載させていただきました。
(初出:株式会社KADOKAWA 月刊ニュータイプ1996年5月号)

まずは「妖獣都市」「鉄腕バーディー」の川尻善昭監督とトークを展開
…2人の会話は、なぜかなぜだか麻雀の話から盛り上がったのだ…

<最初は漫画家になりたかった>

麻雀、お強いんですか?

ことしは無敗です(笑)。

いつごろお覚えになったんですか

マッドハウスができるときに、マッドハウスに入るんだったら麻雀を覚えなくっちゃだめだって言われたんですよ。2か月位、虫プロ辞めてから期間があって、その間に特訓して、マッドに入社した、と(笑)。

ちなみにどういう上がり手がお好きなんですか? 麻雀には性格が出るっていうから。

僕は美しい手にこだわっちゃう。

美しい(笑)こんどぜひ上がり手を見せてください(笑)ちなみに、マッドハウスに入られたのは?

えーと、1973、4年かな。

いちばん最初にアニメの現場に入られたきっかけって何だったんですか?

最初、漫画家になりたくてね。大勢で漫画描くところがあるって知って、アニメーション、ってまだよく分からなかったんだけど、やってみようか、と。で、虫プロに入ったんです。18のとき。
初仕事は「どろろ」の動画。原画になったのは「ムーミン」かな。りんさんが監督でね、最初会ったとき、ああ、こういう人がアニメーションの監督っていうんだな、と。いまだにそう思うけど、監督、って感じがすごくしましたね。

なるほど。いちばん最初に絵コンテを担当された作品は?

「日本昔ばなし」とか「世界昔ばなし」とかで。初監督は、一応「レンズマン」なんですけど、本格的に最初の監督作品と言えるのは、やっぱり「妖獣都市」からになるんじゃないですかね。

<山田風太郎はおもしろいよね>

「妖獣都市」は、菊池先生の作品がお好きで映像化したいとお考えになった作品なんですか?

いや、それまでは読んだことがなかった。読んでみたら非常に好みが合う部分があって。後で聞いたら、菊地さんも山田風太郎ファンだったんですよ。で、僕も大好きなんだけど。

獣兵衛忍風帖:陽炎 illustrated by MOKONA APAPA(CLAMP)
©川尻善昭・マッドハウス © CLAMP・Shigatsu Tsuitachi CO.,LTD.

私も山田風太郎先生は大好きなんです。特にお好きなものはありますか?

「甲賀忍法帖」かな。別の部分ではいろいろおもしろいのあるんだけど。「魔界転生」もアイディアはおもしろいね

私「魔界転生」は、映画を先に見たんです。で、山田先生の原作を読む前、石川賢さんの漫画を拝見しました。そうそう、川尻監督にぜひ「魔界転生」をアニメ化していただきたいですよね。

石川賢さんのを元でやったら、きっとおもしろいような気がするね。

<お客さんには親切に見せたいね>

そういえば、TVアニメ「あずきちゃん」のキャラクターデザインをなさってらっしゃいましたよね。

原作のさらっとした感じが、なかなか描けないんですよ。いたずら描きっぽいおもしろさってあるでしょ。あれがすごく可愛いんだけど、アニメとして動かすときは結構難しい部分があるよね。

豪華なスタッフですよね「あずきちゃん」は。オープニングはりんさんで脚本が雪室俊一さんで、キャラクターデザインが川尻さんで。

そうだね(笑)「バーディー」もそうなんだけどいろいろ毛色の変わった作品をやるのもアニメーターならではの仕事だよね。自分の個性で描くのは、楽しいけど、ずっとだと飽きちゃう。ハードなのやったらライトなのやりたい。「妖獣都市」やったら「あずきちゃん」とか(笑)。

「バーディ」は着地音がしなさそうな着地とか、絵コンテとか構図とか、やっぱり川尻さんだなぁ、って、拝見して思いました。

気持ちいいタイミングとかアングルの癖ってあるでしょ。こういう構図が美しく感じる、っていうの、特にアクションでは出ちゃうかも分かんないね。

そうですね。そうそう、「バーディ」って、日常芝居がかなり続きますよね。川尻さんの作品で日常芝居があんなに続くのは、はじめて拝見したような(笑)。

日常芝居はあまりやらないからね(笑)。カメラどこ置けばいいか、迷いました(笑)今回は事件が生活感というか現実と並立してて、コントラストがおもしろいから。原作の味わいをストレートにアニメーションで再現したいな、と。

1話を拝見しただけですが、よい意味ですごくわかりやすくて楽しめました。

うん、僕の映像は、見てるお客さんがどういうことを知りたがってるのかってことに対しては割と親切なんじゃないかな。親切にみせたいな、と自分でも思ってるし。お客さんをおいてっちゃうような見せ方、自分はしたくないんだよね。

<りん監督絵コンテとにかくすごい!>

今回の「バーディ」は原画などでも参加なさってるんですか?

ええ、大体どの作品でも原画もやるんだけど、原画描いてるときがいちばん単純に楽しい。絵コンテもおもしろいんだけど純粋に楽しむ感じとは違うんだよね。絵コンテやって原画やると、頭、切り替えられて、すごく気分的に楽だね。先生方は、4人いらして分担があるわけでしょ。

ええ、そうですね。

「X」とかすごい密度だよね。

そ、そうでしょうか。

大変そうだよね(笑)。

はい(笑)。

映画の「X」の絵も、結城くんの修正見てると、よくも、って位描きこんである。

映像の「X」はキャラクターも、背景も、ほんとうにすごいですよね。うちの作画のメンバーが言ってるんですが、漫画やイラストの場合は、建物が壊れてるほうが楽なのです。フリーハンドで描けますから(笑)。皆さんが形や細かいディテールを認識していらっしゃる建物というのが、いちばんごまかしづらいみたいです。中野サンプラザとか、サンシャイン60とか、東京タワーとかだと、きちっと描かないとそう見えないので。
 そういえば、りん監督のお描きになった「X]の絵コンテ、建物とか定規で描かれてるんですよね。昔からなんですか?

りんさんのコンテは、昔っからきれいだった。字もね。

デザイン文字みたいな字。独特の字、お書きになりますよね。

俺、あの字書いてたら、コンテ終わんないな(笑)。

<幻想、耽美、好きですね>

実写の映画は、お好きなのはありますか?

大川さんは?

なんでも見るほうなんですが、どうしてもスプラッタはだめなんです(笑)。ホラーやサスペンスは大好きなんですが「エルム街の悪夢」とか、好きです。

あれ見せ方おもしろいよね。

川尻さんはホラーはいかがですか

僕は幻想的とか、耽美っぽいものの方がやりやすいし、絵的にも好きだね。だからホラーなんかはやりやすいし、好きですよ。

お小さいときから、怪奇ものとかお好きだったんですか?

そうかもしれない。「ミステリー・ゾーン」とかね、好きだったから。
映画は大体何でも見ますよ。いちばん好きなのは「明日に向って撃て!」。見た後の気分みたいなものがね、何でこんなに気持ちよくなったんだろうって、思ったよ。つくり手のロマンチックな部分とか、その世界をつくるあったかさ。そういうのが好きなんだよね。つくり手の目がすごく優しいっていうのかな。

じゃあ「スティング」とかも。

うん。好きですね。

<TVで見てるのは「古畑任三郎」>

私、スポ根ものも大好きだったんですよ。TVで「巨人の星」、一生懸命見てました。

俺、もうアニメの仕事やってた、そのころ(笑)。「巨人の星」は、いま思えばかなり刺激的な作品だったよね。

「エースをねらえ!」も、好きでした。私はあれでテニス始めました(笑)。

「エースをねらえ!」、やってました(笑)。あのときスタッフでテニス知ってるやつとか、誰もいなかったもんね。ラケットの持ち方も知らないで(笑)。

私は川尻さんたちがお作りになったものを、夢中になって見てました。私にもお蝶夫人来ないかしら、って思いながら(笑)。いまテレビとか毎週見てらっしゃるものはないですか?

続けて見てるっていうのは、あまりないすね。「古畑任三郎」ぐらい。

「古畑任三郎」。印象に残っているお話とかありますか?

ベスト1は、最初のシリーズの、堺正章の歌舞伎役者かな。最初に見たとき、時間の中に収めるため、つじつまとかあえて無視しちゃう潔さっていうのかな。あ、おもしろいとこだけ見せるんだ、みたいなね。考えつかなくてこうなっちゃった、じゃなくテレビだからこう見せるんだ、というとこに感動したな。

<じじいが主役、やりたいね(笑)>

香港映画はいかがですか?

好きですよ。数は、そう見てないんだけど。

私、香港映画で感動した作品は、「妖獣都市」なんですよ。いや、作品のできがどうこうのじゃなくて(笑)。菊池先生の作品に出てくる、人を食べてしまうような美女って、香港にはホントにいるんだと、感動しました(笑)。そうか、香港に行けば[菊池美女]に会えるんだって(笑)。

そう、それは思った(笑)。香港映画は、ストーリーよりも、お客への見せ方を重視してると思うんだよね。香港に行ったときに映画館に行ったんだけど、どうってことない説明会話のシーンなんて、みんな、隣の人と話してる(笑)。もう、すごいテンポでギャグ、アクション、って連続していかないと、お客さんが見てくんないんだよね。話は分かんなくても、どこから見ても楽しめる、そういうつくりだよね。

なるほど、そうかもしれません。

自分なんかハードなものが多くて。男同士のね、監督でいったらウォルター・ヒルとか、ああいう男くさいドラマが好きなんで、アニメーションでは、難しいんだけれど。40歳位のじじいが主役、とかやりたいんだけど(笑)。「ダイ・ハード」とか、おやじが主役でちゃんと成立するんだけど。わけじゃない。アニメーションだとどうも難しい。可愛い女の子とかかっこいい男の子とか出てないとね(笑)。
大川さん、じじいが主役の漫画とか、描かない?

是非、挑戦したいです(笑)私、おじいさん、大好きですから(笑)