川尻善昭公式サイト

Review

『映画として絶賛されるマッドハウス海外情報』

Reviewer : 池田憲章

※『マッドハウスに夢中!!』中の「映画として絶賛されるマッドハウス海外情報(池田憲章)」を関係者のみなさまのご厚意により転載させていただきました。
(初出:『マッドハウスに夢中)2001年7月7日発行 オークラ出版刊)

マッドハウスのアニメ作品は、ワールド・ワイドだ。アメリカやイギリスの海外にもたくさんのファンがいるのだ。海外で出版されているアニメ雑誌やアニメ解説書で、マッドハウスの監督や作品がどう語られているか、英文を覗いてみよう!


アメリカのアニメファンが愛読する『アニメリカ』!

 アメリカの雑誌で『ANIMERICA』というアニメ専門誌がある。

 創刊して今年で9年目になる人気雑誌で、アニメ+アメリカの合成語である誌面から、ディズニーやハンナ・バーベラのアメリカ製アニメの本かと思うが、実は現在の日本製アニメ作品を追い続けている日本アニメ専門誌なのだ。

 右の写真は2001年1月号で表紙を『バンパイアハンターD』で飾っている。カラーページで川尻善昭監督と作品内容を解説する特集も組まれていて、モノクロページには箕輪豊キャラクター・デザインによるキャラ表で登場人物を紹介している。アメリカでの作品リリースだけでなく、日本のアニメ製作の最新事情を読めるのがこの雑誌の人気の理由。創刊当初は、日本のアニメ雑誌の引き移しだったのが、最近は取材スタッフが来日して、監督や原作の漫画家、アニメーターにインタビューを行い、アメリカ人の彼らが聞きたい情報をしっかりと反映させている。

 アメリカのジャパニメーションと呼ばれている日本製アニメのファンの拠点で、ビジネス的にも大きくなり始めた英語圏の日本製アニメの評価とそれを支えるファン層が見えてくる雑誌である。

 マッドハウスという会社の名前は、その中でも特別の響きがあって、他の研究本や文献を含めて、海外情報の中のマッドハウスを紹介してみたい。

『アニメリカ』2001年2月号を見てみると、DVD・ビデオ最新リリース評の中に『妖獣都市』DVD、『カードキャプターさくら』DVD&ビデオ、『十兵衛ちゃん』DVD&ビデオ、『ペットショップ・オブ・ホラーズ』DVD&ビデオ、『幽幻怪社』記念版DVDが入っていて、半ページ大の中でたっぷりと解説されている。まずは、それを見てみよう。『妖獣都市』は、1992年にアメリカでビデオ発売され、評を書いたリオ・ヤーネスは12歳でそれを見た。彼はこう書いている。「友人から導入部のストーリーとスパイダー・ウーマンが主人公を殺そうとする辺りを聞かされて、もし奴の言う半分も本当なら、それはこの世で最高のアニメだと思った。そして、それは本当だったんだ!(中略)それは私にとって、少年から青年になる素晴らしい年の始まりで、アニメが成熟していくのを見つめていく入口となった。私はあの日を生涯忘れられないだろう」

 彼は「それは12歳の私たちにとって、川尻善昭のくれた福音(ゴスペル)だった」とまで書いている。評のラストを彼はこうしめくくっている。「もし、あなたがこの作品を集中にできれば、『妖獣都市』はあなたにとって全てのアニメ体験の中で第一級の、もっとも大切な作品になるだろう」と。

 書き手の魂がふるえている文章で、ジャパニメーションを発見して、その成長を追ってきた喜びがあふれている。日本のアニメ・ブームの頃と全く同じなのだ。

はずむ感性のライターたち

『カードキャプターさくら』DVD、ビデオ評のウィニー・チョウはこう書く。「私は少女漫画のアニメは何かピンとこないのだけど『カードキャプターさくら』は見ていておもしろかった。なぜならどのカットもキュートで、何度でも見たくなる作品だからだ」「アニメのクオリティーにしてもTVシリーズとして高いレベルで、さくらの魔法シーンは毎回変えているし、カードの戦いも見せ場が多い」云々……。アメリカのTV放送はカット版らしく「『カードキャプターさくら』は、オリジナルの、ノーカットの、日本のサブタイトル版がベストだ」とTV放送版で満足しないように解説しているのが実におもしろい。

 クオリティー評が必ず入ってきて、例えば先ほど引用しなかった『妖獣都市』も「劇場映画なみの画面の充実は、最近のお寒いビデオ・アニメといかに違うか、驚くほどだ」と絶賛している。『十兵衛ちゃん』(3)DVD、ビデオ評はアダム・レホーンで、十兵衛ちゃんの両親と竜乗寺の兄の過去が明らかになると説明。「私は正直に言えば、『十兵衛ちゃん』が特別好きというわけではない。しかし、この作品は人を悩殺する部分があって、この第3巻のコメディー、アクション、ドラマなんでもこい的ミックスの味わいはパーフェクトの出来で進んでいく」――おそらく、アダムはリアリスティックな作品が好きなのだろう。でも、大地丙太郎監督の狙っている楽しさに困りながら喜んでいる感じがよく出ている。「子供向けの作品には見えない」という指摘も出てきて、大地作品のポイントをしっかりついている。日本でもなかなかない大地監督論が見えてくるのである。

『ペットショップ・オブ・ホラーズ』は、名物ライターのドクター・ブラウンが書いていて、「この作品、TVシリーズ版の『13日の金曜日』を少しひねった感じのアイデアで、『グレムリン』も入っているかな」と読者に作品カラーをうまく説明している。かなり好き嫌いが分かれる作品だと書いて、理由は「キャラクターがクールなこと。端正で秘密めいた店長の部分とストレートでマッチョな警察が微妙で、キャラクターの心情の交りあいがもう一つ見えるのだ」と書いている。「『ペットショップ・オブ・ホラーズ』はあなたが見てきたホラー作品とだぶる部分はないかもしれない。だが、おもしろいシリーズであり、さまざまな愛すべき超常現象のTVシリーズや映画が共振する作品なのだ」とまとめている。

『幽幻怪社』評は前述のリオ・ヤーネス。「シリーズのキィーは、魅力抜群のキャラクターたち。あやかと刈野は無敵のパートナーでどんな危険もとびこんでいく。(中略)私的に言えば、この作品は入手できるパイオニアLDC製作のベスト作品。このパーフェクト・コレクションのDVDはその名に恥じない仕上がりだ」と大絶賛。

 ライター陣の伸びやかな筆使いが実に印象的だ。彼らが日本の現代アニメを紹介していく第一世代なのである。

 一つ一つの作品にあった文章のスタイルまで作ろうとしている。『スター・ウォーズ』が出現した1977年当時のアメリカの若いSF映画ライターとそっくりである。日本のアニメ作品がベテランの映画記者でなく、若い感性のライター&ファンのはずむパッションに支えられているのは幸運だと思う。

 次は『アニメ映画辞典』ともいうべき好著『アニメ・ムービー・ガイド』(1996年)を詳しく紹介したい。

『The Anime! Movie Guide』(1996年、ヘレン・マッカーシー著、出版社The Overlook Press)は、1993年におそらく英文で初めて日本のアニメ作品の巨大さを紹介しようとした入門書『Anime! A Beginner’s Guide to Japanese Animation』(Titan Books刊)を書いたヘレン・マッカーシーのアニメ作品辞典で、アメリカやイギリスで作品やアニメ作家のことがもっと知りたいと思っていたファンのニーズに応えた先駆的な一冊だった。(今でも版を重ねていて、日本でもタワーレコードや洋販のルートで簡単に洋書売り場で見つけることができる。285ページのコンパクトな本である)序文がこの本を書こうとしたヘレンの意図をよく表していて、少し引用してみよう。

「私の最初の本<アニメ!日本製アニメのビギナーズ・ガイド>のさまざまな読者は他のもっとデティールに満ちた本が将来できるだろうと予感したはずだ。

 あの本が出版されて3年の間に、日本製のアニメの状況は、イギリス、ヨーロッパ、アメリカへ次々に紹介され、興味を持つジャーナリスト、研究者、ファンはどんどん増え続けている。しかし、英語圏における日本製アニメーションの全体像のつかまえ方は、きわめて限定された情報によって曲解され続けている。日本で製作され、放送、上映、発売され続けているアニメの情報は百分の一も英語で英語圏に流れてこないのである。

 この本はその状況のバランスを再整理すべくスタートした。

最初の本は、日本製アニメ全体の歴史とアニメの主要ジャンルの説明、どう情報を集めたらいいのかの視点を提供した。それは読者一人一人に日本のアニメという巨大な大陸を探検し、自分自身で作品や作家に出会ってほしいと思ったからだ。望みうるならば、この本で探索に使い、学んでいくさらに詳細なデータと情報をあなたに届けたいと思う」

 この本の特徴は、ビデオで見られる作品に限定したことで、1983年から1995年までの856作品の映画、オリジナル・ビデオ・アニメ、TVシリーズを年度順に、映画、OVA、TVシリーズの順で並べ、日本語のクレジット、製作年、アメリカ版のリリース年と発売しているビデオ会社、アメリカ版音響スタッフを記して、ストーリーと解説を合わせて説明、☆マーク5つの特典評価つき。

 また、英語圏でビデオ化されていない1993年以降の最新作は、日本語版クレジットのみで作品紹介に挑んでいる。おそらくビデオを日本から取り寄せ、かたっぱしから見ているのだろう。日本ですら単独著書の『アニメ作品辞典』はないのだから、大変な労作である。

 マッドハウスの作品評に触れる前に、序文のラストを紹介しておこう。一度でもアニメの作品評、作家論に挑んだ人ならこのヘレンの願いに心動かすだろう。

「私はこの本の加筆にいつの日か再挑戦したい。そして、同じように私たちアメリカ人にとって巨大でいまだ誰も踏み込めないでいる日本のTVアニメの世界を十分な調査をしてまとめてみたい。いつの日か、その出版に挑んでみよう。

 そして、私はアニメが私たちの世界に与えた影響をいつの日かまとめ、アニメの魅力を本にしようとした他の研究者と一緒に、曲解されているアニメのイメージを正しい翻訳と知識で修正したい。メディアの変化は正しい評価のほんの始まりにすぎない。もう誰も止まるわけにはいかないのだ」

 日本のアニメ編集者や研究者、アニメスタッフの協力があれば、ヘレンの願いは現実のものとなるだろう。このマッドハウスの本も大きな刺激になるはずだ。

 さて、マッドハウスのアニメ作品は、同署でどう書かれているのだろうか。

 1983年の映画に『はだしのゲン』(監督・真崎守、キャラクターデザイ、富沢和雄)が登場している。アメリカでは1995年にストリーム・ライン社から英語版でリリース。原作の漫画も原爆の悲惨さでアメリカやイギリスでもよく知られた作品だ。

「この作品は日本アニメ史上に残る記念碑といっていい」とヘレンは評している。

「『はだしのゲン』は人間の魂の最もすぐれた、そして最も嫌悪すべき記録だ。涙なしに見ることはできないだろう。このフィルムは原爆投下で起きた生まれなかった(生まれたはずの)世代、そして幼い少年の感受性が目撃した証言であり、崇高で私たちが自らを見つめざるをえない強い意志があふれている。必見のアニメ作品。★★★★★」

 最高点は他には『AKIRA』、『風の谷のナウシカ』、『となりのトトロ』、『火垂るの墓』、『オネアミスの翼』ぐらいだからいかに高い評価か判るだろう。ヘレンの人間ドラマにかける想いは特に深いのである。

『幻魔大戦』(りんたろう監督)は、大友克洋初のアニメの仕事とクレジットで書くだけで、ストーリーのみ、★★★。アメリカでは1992年にUSマンガ社でリリースしたのだが、英語版がひどいのかヘレンのコメントがない。ぜひ再見してのコメントが読みたいところだ。

『カムイの剣』(りんたろう監督)は、「さまざまな魅力的なキャラクターと膨大なシークエンスによって『カムイの剣』はひかえめだが力強い人種差別を撃つ歴史ファンタジーのベスト作品の一本となった。とりわけ音楽がすばらしく、伝説的な旋律とボーカルの歌声がすばらしい効果をあげている。★★★★☆」

 星四つ半! 江戸時代に怪僧天海に忍者、そして西部劇の波乱のストーリー天海にビックリ仰天であった。日本のアニメ・ファンの評価ではどうなのだろう。

 川尻善昭監督の作品も見てみよう。

『妖獣都市』は1992年ストリーム・ライン社からビデオ・リリース。翌年には劇場公開もされたと書かれている。1994年にはMANGAビデオ社から再リリース、今年アーバン・ビジョン社からDVDリリースされたヒット作だ。

「日本の第一級のホラー監督が生んだ大都会ゴシック・ホラーの一遍。」セクシャルな描写と血が満載とヘレンは書き、★★★の星三つ。先の『アニメリカ』の評価とくらべると興味深い。何人もの視点が作品紹介には必要と痛感する。

『サイバーシティ・OEDO808』(川尻善昭監督)は、1994年MANGAビデオ社よりビデオ・リリース。

「川尻監督の最も洗練された仕事の一つで、コンピュータ・ハッキングの危険な衝動を描いていく。(中略)エキサイティング・スタッフ。★★★★」

『獣兵衛忍風帖』(川尻善昭監督)は、「パワフルでドラマティックなストーリーが数世紀前に展開、若き忍者マスター獣兵衛は、政治の陰謀と強靭な悪の勢力、黒魔術と優雅さと氷のような心を持った敵と戦い続ける。(中略)この作品はデザイン、アニメーションの動きと共に職人技のすばらしい名品だ。見ていく楽しさではパーフェクトだ。★★★☆」

 川尻監督の最新作である『バンパイアハンターD』を見たら、ヘレンは何と書くのだろうか。画面のクオリティの高さと監督の持つ世界観、個性的なキャラクター(特に敵キャラクターとヒロイン)がいかにインパクトを与えているのかが文章の中に見え隠れしている。

 OVA13本シリーズの『ロードス島戦記』(永丘昭典総監督)はどうかと見てみると、1995年にUSマンガ社からビデオ・リリース。

「ダンジョンズ&ドラゴンズの世界観は、水野良とグループSNEがテーブルトークのシナリオで『ロードス島戦記』を雑誌掲載しはじめた時、日本ではあまり知られていなかった。そして、すぐにヒロイック・ファンタジーと西洋の神話や伝説に満ちたそれは、アニメの中にもっとも強力なモチーフとして一般化することになる。全ては水野良の構築した世界と魅力的な目もくらむキャラクターの創造にあった。(中略)アニメーションはうまく世界を見せ、物語は現代的で、最初はランダムに見えた――だが、それは狙いでその魅力は大きく広がっていった。1話~6話。★★★★」

 7話から13話は、別稿で同じ★4つだ。「この愛すべきシリーズの後半は、最初よりさらに力強くなった。リミテッド・アニメーションは、脚本と音楽とデザインのパワーによって補完された」

 CLAMP原作の『東京BABYLON』は、1994年US-MANGA社でビデオ・リリース。

「このスタイリッシュなビデオは、原作のCLAMPの少女漫画の技法をよく理解し、ホラー・ファンも満足させるフォーマットの中でストーリーを進めていく。(中略)★★★」

『東京BABYLON2』は、★3つ半で、メインキャラクターの心理描写がたくみなCLAMP世界に注目している。

 まだ『WISH』も、劇場用アニメ『X』も見ていないわけで、はたしてどんな評価をするのだろうかと夢想してしまう。

 TVシリーズの『YAWARA!』は、データだけで見ていないので評価なし。ヘレン好みのストーリーなので気に入ってくれると思う。TVシリーズのマッドハウス作品はやはり見ていないようだ。

 日本で年代順のちゃんとした作品辞典が出れば別だが、アメリカのジャパニメーション・ファンは、数少ない英文のデータと日本のアニメ雑誌やアニメ会社のホームページで知識を少しずつ広げて作品を見続けているのが現状だ。


 マッドハウスは、クラフトマンシップとシネマ・スタイル、パーフェクト、デザインの力で語られることが本当に多い。

 一気にDVD化が進む中、世界中で多くの人がマッドハウスを発見して驚くことだろう!!